筑波の山並みへと視線が通じるシンボリックで軽やかなリズムを刻む折板状の屋根は、消防署としての力強さと、市民の日常に寄り添う親和性を両立させています。街と署の境界をあえて曖昧に設定することで、消防活動が都市の日常へと溶け込み、市民が消防署に親しみを感じられる「開かれた透明性」を構築しています。
内部空間では、ガラス越しに活動の気配が伝わり「見る・見られる」の関係性をデザイン。消防署の日常が可視化されることで、消防署を「遠い存在」から「地域コミュニティの拠り所」へと変容させました。
24時間の緊張感と迅速な出動を両立させるため、仮眠室の構成を思慮。個室の独立性を担保しつつ、その手前に緩やかな「バッファーゾーン」を配置しています。このエリアは、個室に入る前の精神的な切り替えを促す場であり、同時に隊員間の偶発的なコミュニケーションを誘発する場となります。一刻を争う出動時においても、この共有空間を経由することで互いを察知、一体感を持って初動へと移行が可能です。プライバシーの尊重と集団の結束力という相反する要素を、建築で融合させています。
また、既存杭と新設杭の干渉を精緻に回避した配置計画は、PCPaC工法(一部S造)を採用しました。建物強度、工期短縮、大スパンの無柱空間を実現することで、消防拠点に不可欠な機能性と将来的な可変性を確保しています。これは資産価値の維持と長寿命化、ひいては環境負荷の低減という、公共建築が担うべき経済的・倫理的責任に対する「建築」としての回答でもあると考えます。
延床面積:3,331.47㎡
規模構造:PCPa一部鉄骨造・壁式鉄筋コンクリート造、地上2階建